ここでは今から鉄筋コンクリートの建物を造られる予定の方や、鉄筋の加工取りつけ
基準に詳しくない方(専門技術者や鉄筋屋さんのぞけばみんなそうですよね.......(^_^; )
の為に財団法人 公共建築協会で決められている基準を実際の鉄筋工事での施工の
順番や部材の種類も含めて簡単に説明してみます。

他にも基準はあります。


 1 材料 

まず材料ですが、皆さんが家などを造られる時の鉄筋コンクリート構造で使用される鉄筋は、JIS G3112
という規格のうち主に、 SD295AやSD345 SD390です。
おおざっぱな分け方ですが細いもの(D10.D13.D16 *1)がSD295Aで太いもの(D19〜)がSD345 SD390 や
SD490 と考えて下さい。
ただし個人の住宅建設に当たっては SD390 490 が使用される事は希でしょう。
(数値は鉄筋部材降伏点の値から来ています)

*1 Dとは異形鉄筋の略で通常使用される鉄筋です。形状が均一でなく太いところや細いところがあり、
コンクリートにしっかり付着して抜けないようになっています。
そして後の数字が鉄筋の太さを表します。10でしたら径10ミリのことです。

 2 部材 

建築の鉄筋コンクリート構造には、ラーメン(柱で建物を支える)構造と壁式(壁で建物を支える)構造とが
ありますがここではラーメン構造で建物を造る場合を例にとって順番に説明します。

ベース 
柱をささえる基礎部分です。ベース筋、ダイア筋、はかま筋で構成されます。

地中梁
ベースとベースを結び壁をささえる基礎部分です。主筋、スターラップ、腹筋、巾止筋で構成されます。


みなさんご存じのように建物自体の構造のかなめの部分です。主筋、フープ、ダイア筋で構成されます。


鉄筋コンクリート構造の壁はそれ自体が構造体の役目をするものもあり、木造建物の壁とは少し違った
部分もあります。縦筋、横筋で構成され出入り口や窓の回りには補強の鉄筋が入ります。


床や上部の建物をささえる部分で柱と同じく重要な構造体です。構成は地中梁と同様です。

スラブ
床や屋根、ひさしの部分をさします。主筋(短辺の方向の鉄筋)と配力筋(長辺の方向の鉄筋)で構成され
補強の鉄筋が入る部分もあります。

 3 加工 

鉄筋工事の第一歩として現場ですぐに組み立てが出来るように材料を切断してから基準に添って加工し
その後現場へ運搬します。部材の構成別に説明をします。

ベース筋
ベースコンクリート部分の縦横寸法から両側60ミリずつのかぶり*2をとって加工します。まっすぐの場合と
両端に90度のアンカーと呼ばれる折り返しをつける場合があります。
ベース部分に杭が打ってある場合はなおかつ端部に180度で長さが鉄筋径の4倍のフックをつけることに
なっています。

ベースダイア筋
ベースコンクリート部分の縦横寸法から両側60ミリずつのかぶりをとって対角線の長さで加工します。形
状はまっすぐです。

はかま筋
ベースコンクリート部分の横と上に配置する鉄筋ですので上部、横共ベース筋と同様のかぶりをとり、下
にはベース筋にひっかける90度のアンカーを付けます。

柱主筋
柱の一番重要な部分の鉄筋でベース筋の上にのります。まず下部ですが90度で長さ150ミリ以上のアンカ
ーを付けます。地中梁の上部から折り返しの先までが鉄筋径の35倍*3以上なければいけません。地中梁の
高さの関係で長さがとれない場合はアンカーの長さを増やして調整します。
上部はガス圧接(組み立ての章でも説明します。)という方法やその他の方法で鉄筋と鉄筋を接続しますがそ
の部分の高さが同じにならないよう一本おきに長さをかえて加工します。
最上部では出隅の4本の主筋に180度で長さが鉄筋径の4倍のフックをつけます。

フープ筋
柱コンクリート部分の縦横寸法から両側40ミリずつのかぶりをとって四角い形状に曲げ、出隅部分に両端
部を配置するよう加工し、そこに135度で長さが鉄筋径の6倍のフックを付けます。
また外回りだけだなく、中間部に取付するタイプもあります。
それと スパイラルフープ と呼ばれる1本の鉄筋を四角や円形の螺旋状に加工した物もあります。
フープには柱外周だけでなく中間部に取付するタイプもあります。

柱ダイア筋
柱の主筋どうしを対角線にむすぶ鉄筋です。両端に135度で長さが鉄筋径の6倍のフックをつけます。
ダイア筋は設計によりなしの場合もあります。

梁、地中梁主筋
柱と柱や梁どうしを連結する梁で一番重要な構成部材です。一般部分では柱や梁の中に鉄筋径の35倍
の長さを入れ込まなければいけません。
普通は90度のアンカーを端につけますが状況によりまっすぐなものを使うときもあります。
また柱側にだけ取りつける端部トップ筋と呼ばれるものや、中央部にだけ取りつける中央部トップ筋という
ものもあります。(写真は宙づり(中吊り?)と呼ばれる配置)
端部トップ筋は柱側にだけ90度のアンカーをつけ柱に鉄筋径の35倍の長さを入れ込めるように加工しま
す。中央部トップ筋はまっすぐなものを使用します。
また梁主筋は梁どうしがつながる事が多いためその時は柱主筋と同じように圧接等の方法を用いて鉄筋
どうしを接続しますが、その場合も隣同士の鉄筋が同じ位置で接続する事のないよう長さを変えて加工し
ます。

スターラップ
梁主筋を外部から包み込む形状の鉄筋です。取りつけした感じがアバラ骨に似ているのでアバラ筋とも
呼ばれます。
また梁中間部に配置されるものもあります。
加工のしかたは柱フープ筋と同様ですが、状況により一つのものを二つに分けて加工したり、フックの角
度を変えたりする事があります。
STP とも呼ばれます

腹筋
スターラップの内側両サイドに取りつけする鉄筋で梁全体の長さより30センチくらい長くなるよう加工しま
す。形状はまっすぐです。

巾止め筋
両側の腹筋の上にかぶせ巾を保つための鉄筋で、片側に90度の、反対側に135度のフックを付けるよう
加工します。

壁縦筋
壁の鉄筋は接続するさい重ね継手と呼ばれる鉄筋径の35倍及び40倍の長さを重ね結束する方法を使用
します。
そのため加工は、各階高+重ね継手の長さ分になるよう行います。

壁横筋
壁が取りつく部分に上記長さの90度のアンカーをつけ加工します。

スラブ主筋
二重に鉄筋を配置しますので(中央部を二重にしないベンドスラブやトップ筋を使う工法もありますが最近
の設計では少ない)まず上に配置する鉄筋(上端筋)からいきます。
スラブの内法の長さに隣の梁やスラブに入れ込む分の長さを+した長さになるよう加工します。
入れ込む長さは片側で鉄筋径の35倍ですので隣にスラブがなく梁だけの場合はアンカーをつけます。
また片持ちスラブと呼ばれるひさしのような形状のスラブの場合は入れ込む長さが径の40倍になります。
下に配置する下端筋
加工のしかたは上端筋と同様ですが入れ込む長さが片側で鉄筋径の10倍以上かつ150ミリ以上となって
いますので、ほとんどの場合アンカーなしのまっすぐな形状の鉄筋に加工します。

スラブ配力筋
主筋と同様です。

*2 コンクリート面と鉄筋との間に定められた寸法の透き間をとることになっています。それをかぶりと呼びます。
*3 この長さを定着と言います。

 4.組み立て 

ここでは実際の現場と同じ順番で説明させていただきます。

1.ベース筋の組み立て
ステコンクリートと呼ばれる原寸墨出し及び高さ調整用のコンクリートの上に配筋します。
大きなベースの場合は現場で原寸の墨におさまるように配筋しますが、小さなベースの場合は工場で組
み立てを行い現場でセットするだけの時もあります。
下にスペイサーというコンクリートブロック等を敷き水平になるよう組み立てます。

2.柱主筋の建て込み
柱筋を支える足場を組み立てして貰い、それに柱主筋が垂直になるよう固定しフープの一部をセットして
おきます。
(基礎エース(キソエース)呼ばれる梁主筋受け等で鉄筋の固定を代用して鉄筋足場を使用しない工法
もあります。)


3.地中梁の配筋
まず主筋を配って配置しガス圧接を行います。
圧接部分は毎回検査を行いますが、その部分を抜き取りしてテストピースとし、引っ張り試験を行う場合
と現場で圧接部を超音波試験して行う場合とがあります。
圧接完了部よりスターラップを結束し腹筋、巾止めの順番で取
りつけを行い梁型枠完了後に梁筋がまっすぐに通るようスペイサーを取りつけます。
また梁を貫通するパイプ等がある場合は周囲に補強筋を入れ強度を保ちます。


4.はかま筋の組み立て
下部のフープを完全に結束しそれからはかま筋を組み立て結束します。
はかま筋の取りつけが完了すると後工程の型枠工事が開始されます。

5.土間、スラブ筋用及び壁縦筋用のサシ筋
地中梁、柱の型枠が完了すると土間、スラブ配筋のさいの重ね継ぎ手に使う鉄筋を型枠に開けられた穴
に入れ込みます。
壁縦筋用のサシ筋は型枠工事前に行ったり並行して行うこともあります。

6.基礎部分配筋検査
上記の鉄筋工事が完了すると基準の通りに鉄筋が加工、組み立てしてあるのを確認して貰う為の検査を
受けます。
検査が完了するとコンクリートの打設です。

7.土間スラブ配筋
埋め戻し、砕石、土間下部工事が完了すると土間スラブの配筋を行います。
土間は一般のスラブと比べて面積が広いので重ね継ぎ手で鉄筋を接続しながら配筋します。
そのさい隣同士の重ね継ぎ手の位置が同じにならないようにします。端部は基礎工事で取りつけたサシ
筋に重ね継ぎ手をして結束します。
最後にスペーサーを下にかって鉄筋が水平になるよう調整します。
基礎と同様に配筋検査を受けてコンクリートを打設します。

8.柱の配筋
土間、スラブコンクリートの上に原寸墨出しが出来た後、柱主筋をガス圧接します。
圧接完了後フープを取りつけし次にダイア筋です。

9.壁の配筋
壁配筋は型枠工事と並行して行われる事がおおいです。
片側の壁型枠が完了した後に組み立てしダブル配筋の場合は巾止めを取りつけします。
接合は重ね継ぎ手で行いますが、横筋は重ね継ぎ手の位置が上下で同じにならないよう位置をずらしま
す。
ラーメン構造の場合一般壁、耐力壁、KW(片持ち階段支持壁)などがあります。
KWの場合は縦筋を外側に配置するよう決められています。
また出入り口や窓等の開口がある場合は、その周囲及び出隅部に斜めの補強筋を入れコンクリートのヒ
ビ割れ等を防ぎます。
壁には構造スリットと呼ばれるエキスパンション材を入れる事がありますが、その場合はスリット手前部分
で端部と同じように補強を行い、スリットに差し筋を貫通して両サイドをつなぎます。
私の今までの経験では差し筋は全て D10-400@ でした。

10.上部梁配筋
梁スラブ型枠工事が完了すると梁の配筋を開始します。
組み立て手順は地中梁と同様です。

11.スラブ配筋
梁配筋が完了するとスラブ配筋に入ります。
下端主筋、下端配力筋、上端配力筋、上端主筋の順で配筋を行います。接合に関しては土間配筋と同
様です。
また壁同様開口部周囲には補強筋が入ります。

12.梁、スラブ配筋検査
基礎と同様に上部配筋完了後に検査を受けその後コンクリート打設です。
鉄筋コンクリート工事はこの工程を階数分繰り返して行われます。

 5.ボイドスラブ 

上記にありますスラブの中にボイドスラブ(中空スラブ)と言う工法があります。
簡単に記述しますと、上端筋と下端筋の間に薄い金属で出来たパイプを配置してスラブの断面をH型鋼
やIビームの連続のような形にし、それで強度を稼ぐと言った感じの工法です。
(こう言う表現で良いのかな?)
中間にパイプを入れますので当然スラブ自体の厚みは増します。
しかしパイプの断面分のコンクリート重量は減りますので同厚のRCスラブと比べると軽量化出来ます。
成が高くなった分の強度でスラブの面積を増やす事が出来ます。
言い換えれば、そうしておく事でB梁を省略出来ます。
言葉だけでの説明は難しいので再び画像を交えて工程順に進んで行きます。

1、ボイド位置の墨出し
梁、スラブの型枠工事完了後にボイドが配置される位置をスラブ上に出します。

2、スラブ下端筋の配筋
梁の取付が完了したらスラブ下端筋の配筋を行いますが、ボイドと平行に通るスラブ筋(スラブ内側
に配置される物のみ。設計上配力筋であるとは限らない。)とボイドの最小の隙間が設定されていま
すのでボイドに接近しすぎない様に位置を参照しながら施工します。
一般のRCスラブの様にピッチが均等にはなりません。

3、ボイド設置
まずボイド固定用の受け金具を配置します。
位置がずれない様にスラブ型枠を貫通して固定配置(ウエッジ方式)する物と鉄筋用スペーサー
のようにスラブ上に置くだけの物と2種類あります。
(注: 事前に型枠大工と主要ボイドとスラブ用根太が同じ方向にならないよう打合せが必要です。
同方向でボイド位置と根太位置が重なってしまうと受け金具の取付が出来ません。)
次は受け金具の上にボイドを載せて固定の受け金具の位置で番線で結束します。
これを全てのボイドに施しボイド設置工事は完了です。
ここで使われているボイドは ワインディングパイプ と呼ばれるものです。
ボイドには円形の物と楕円形の物と2種類あります。
また1方向だけの配置と、ここでの画像のように2方向に配置する場合とがあります。

4、スラブ上端筋配筋
まずボイド上にスペーサー用の捨て鉄筋を流します。
次に下端筋の時と同様に内側の鉄筋が同方向ボイドと隙間が取れるように配筋します。
内側配筋がボイドとクロスする部分では縦横2重に捨て鉄筋を流します。
ボイドスラブと一般RCスラブの接点では段差補強があります。

上端筋に関してですがモチアミ配筋+トップ配筋になる場合が多いようです。
配筋図(スラブリスト)では懐かしい A B C D にて区分分けしてあります。
昔のベンド配筋(ベンドスラブ)の時は圧縮側と引っ張り側の境界がスラブ短辺の1/4付近
の位置で区分されていましたがボイドスラブの場合は1/4であるとは限りません。
それと梁にひねり防止用の補強筋が入ったりします。(お呪い程度のひねり補強 (^_^; )
以上でボイドスラブ配筋完了です。

機会がありましたら新たな画像を追加の予定です。

 6.異形鉄筋の重量 

異形鉄筋の1m当たりの重量


Kg/m
D10
0.56
D13
0.995
D16
1.56
D19
2.25
D22
3.04
D25
3.98
D29
5.04
D32
6.23
D35
7.51
D38
8.95


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